フィリピン・マニラに来て驚いたことのひとつが、お肉を調理前に洗うという習慣。
といっても、日本では洗う習慣がないので、「えっ、うち洗わないで使ってるけど?!」という方も多いと思います。
日本とは衛生状態の異なるフィリピンマニラでお肉を洗うor 洗わない問題は定期的に議論が起こる印象です。
結論を申し上げると、「お肉は洗わないほうがいい」とされます。
が、うちでは結局一部のお肉を洗っています^^;
以前、マニラの水事情 の記事でも少し触れましたが、今回改めて調べたのでまとめてみます。
ここでは、
- お肉を洗わないほうがいい理由
- それでも洗いたい!というときに注意すること
という点にフォーカスします。
☆参考にした記事は最後に一覧にしています。信頼できると思われるサイトを選んでいますので、ご興味ある方はご覧ください。
お肉は洗わないほうがいいという結論。その理由は
フィリピン以外にも、お肉を洗う習慣をもつ国は意外と多いそう。
海外版のYahoo知恵袋のような質問サイトには、お肉を洗うことについての各国の質問がちょいちょい見られます。
2014年のイギリスの調査では、44%の人がお肉を洗う習慣がある、という結果だったと報告されています。(参考*1)
しかし、「お肉は洗わないほうが良い」ということを食中毒予防の点から述べた多くの公的機関の記事がある一方、お肉を洗うことを推奨する公的な記事は見当たりません。
その理由について、アメリカのUSDA(United States Department of Agriculture:アメリカ農務省)では以下のように説明しています(参考*2)。
- お肉を洗うことにより、水しぶきとともにバクテリアがシンクや他の調理器具にうつり、汚染を広げてしまう。
- 洗うことによってバクテリアは取り除けない。
アメリカのCDC(疾病管理予防センター)およびイギリスのNHS(保健社会福祉省が運営するサイト)では鶏肉の記載のみしか見つけられませんでしたが、「生肉は洗わないこと」と明記されています(参考*3・4)。
食中毒の原因のうち、お肉からの感染として有名なものがサルモネラやカンピロバクターといわれる菌です。
それらの菌は食肉の内部にもあるため、表面を流水で洗っても十分に取り除くことができないという見解です。
特に鶏肉において、東京都の調査では市販されているひき肉の51.9%がサルモネラ菌に感染(参考*5)、4〜6割でカンピロバクターに感染している(参考*6)という結果が公開されています。
というわけで、お肉の洗浄には菌を取り除く効果がないばかりか、食中毒のリスクを高めてしまうという結論なんですね。
☆代表的な菌の死滅温度
- サルモネラ菌:65℃以上3分加熱
- カンピロバクター:65℃以上1分加熱
- 腸管出血性大腸菌(O157、O111など):75℃以上1分加熱
洗わない派のなかには、水っぽくなる、旨味が逃げる、という味についてのコメントをされている方もいらっしゃいました^^
それでもやっぱり洗いたい、というときは
英語の記事だとどうしてもアメリカやイギリスなど、日本と同じく食肉処理の衛生管理がしっかりしている(と思われる)国の情報に偏ってしまいがち。
フィリピン含め、東南アジアの国々は食肉を処理するときに日本などと状況が異なるのが現状ですよね。
DOH(Depertment of Health:フィリピン保健省)とWHO(World Health Organization:世界保険機構)はともに、「生肉を他の食べ物と分けること」「生肉を扱ったあとは必ず手を洗うこと」といった事項のみで、(私がネットで探した限りでは)お肉を洗うことについては言及していません(参考*7・8)。
医療者の身としては、食中毒のリスクがあるならお肉は洗うべきではない!と言いたいところですが、、
私や周りの「お肉を洗いたい派」の気持ちとしては、、
- 素手もしくはあまり取り替えない手袋を使う
- オープンエリアで虫やほこりなどが付着する環境
- お客さんが触れるところに並べられていることもある
という状況で売られているのが気になる、というのが本音。
洗っても菌を完全には取り除けないとはいっても、気持ちとして表面の汚れを洗いたいなあ〜という人もいますよね^^;
骨などの細かい異物がお肉についていたりといったこともありますし。
(ただ、私の周りでもスーパーマーケットやS&Rは安心という人もいますし、一度も洗ったことないけど全然大丈夫、という人も多くいらっしゃいますので、気分の問題かなとも思います。)
(↑市場の様子)
(↑スーパーマーケットの様子)
そして、お肉を洗うときに菌が飛び散るという点は納得なんですが、お肉を処理した調理器具を洗うときもリスクは同じでは??という疑問も。
そのため、お肉を洗う洗わないよりも、お肉を扱う環境とその後処理のほうが重要だな、というのが私個人の結論です。
☆あくまで個人の見解なので、健康被害などの責任は持てません、あしからず。
ということで、うちはお肉の種類によって洗う洗わないを分けることにしています。
我が家のルール
- 洗わないお肉はサンティスで購入する(ひき肉など)
- お肉用、お魚用、野菜用とまな板やボウルを分ける
- お肉を扱うのはお野菜などの処理をすべて終えたあとにする
- お肉を洗うときは場を変える(カット済の野菜などはすべて別の台に避難させる)
- お肉を処理したまな板、包丁、シンク、蛇口などはすぐに洗う
☆サンティスとは目の前でお肉を処理してくれるお店で、ひき肉や薄切り肉などを購入しています。これも個人的な信頼をおいているだけで、人によると思います^^;
サルモネラは乾燥に強く、空気中でも生きられるという特徴があるので、お肉を使用した調理器具の後処理だけでなく、時間をおいたタイミングでも生で食べるもの(サラダやフルーツなど)を処理する前に使う調理器具を(普段からお肉と分けていたとしても)熱湯で消毒する、というひと手間があるとさらに安心だと思います。
まとめ
というわけで、いろいろ調べた結果としては
- お肉を洗うことは菌を広げるおそれがあるので食中毒予防としては推奨されない
- これまでお肉を洗っていなかった人→そのままでOK
- やっぱり洗いたい人→周りに飛び散ることを想定して調理場の環境を整える
- お肉もお野菜も十分な加熱が大切
というところでしょうか。
私は夫にも「潔癖だ」と言われるので、お肉を洗わない派の方にとって不快になる表現があったら申し訳ありません。
少しでも参考になれば。
- BBC:Food safety: Raw chicken ‘should not be washed’
- USDA:Washing Food: Does it Promote Food Safety?
- CDC:Chicken and Food Poisoning
- NHS:Why you should never wash raw chicken
- 厚生労働省医薬食品局食品安全部:正しい知識で食中毒対策を! 肉はよく焼いておいしく食べよう
- 東京都食品安全情報評価委員会:知って防ごうカンピロバクター食中毒
- DOH:HOW CAN MEAT BE SAFELY PREPARED?
- WHO:Tips on food safety